不動産取引における重要事項説明のIT化とはどのようなものか?・・・ | ユニヴログ

不動産取引における重要事項説明のIT化とはどのようなものか?・・・

こんにちは システム部の大江です

政府のIT活用の閣議決定を受けて、不動産業界では、取引の仲介時に定められている『重要事項の説明と重要事項説明書の交付』について、IT化できるんじゃないか?ということで、これまでに「IT重説検討会」なるものが開催されてきました。現在、取引主任者による対面の説明が要件として義務付けられていた重要事項説明ですが、果たしてどのようにIT化されて、業者と消費者にとってどのようなメリットがもたらせるのでしょうか?

 

平成26年12月25日に第6回目の検討会が開催された際の配布資料が公開されています。

これをもとに、どのようにIT化されてゆくのかを見てみましょう・・・・

http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000105.html

 

IT化検討までの流れ

これまでの流れをざっと説明すると・・・

 

【平成25年6月】閣議決定

閣議決定された「世界最先端IT国家想像宣言」で、対面・書面交付が前提とされているサービスや手続きを含めて、IT利活用のすそ野を拡大しようということになりました。

 

【平成25年12月20日】アクションプラン策定

IT総合戦略本部においてアクションプランが策定されました。

その中で、不動産取引では、多くの消費者が、物件情報の収集についてインターネットサイトを使用している現状を背景として、重要事項説明について対面原則の見直しが検討対象として挙げられました。

 

ちなみに現行法では、宅建業法第35条に基づいて、宅地建物取引主任者が行う重要事項説明は対面で行うこととされていて、契約の際に交付が義務付けられている書面についても電磁的方法による交付が認められていない状態です。

 

これをインターネット等を利用して対面以外の方法で、重要事項説明を行い、書面を交付出来る仕組みを実現させようという流れになりました

 

【平成26年4月】「IT重説検討会」立ち上げ

「IT重説検討会」を立ち上げ、平成26年12月までに合計6回の検討会が開催されました。

第6回目の検討会では、次の段階のフェーズとして、社会実験の実施を通して具体的な調査と検討を行うための準備についてまとめられました

 

 

これから社会実験を始める段階へ

 

第6回検討会で、取り纏め案が配布されています。資料をもとに要約するとだいたいこんな感じです

 

「重要事項説明」について必要な要素

①宅地建物取引主任者よって説明が行われ、取引主任者証が提示されること
②説明を受けるものが、買主・借主になろうとする本人であること
③取引主任者が取引の判断に必要となる事項を重要事項説明の相手方に伝達すること(図面も含む)
④やりとりに十分な双方向性があること
 説明を聞いていることが確認できる。理解していることが確認できる
 説明している双方の資料に誤認や齟齬が無い状態である
 説明を受けているものに疑問が生じたら提起し、取引主任者が回答できる
 説明の際、双方に齟齬があるとき適宜説明書の訂正などが行える
⑤取引主任者が重要事項説明書に記名押印し交付すること

 

必要な要素を満たすIT活用の可能性

①~④についてはテレビ会議等のインフラ技術を用いれば必要な要素を満たすことは可能
⑤については電子署名の技術が引用されるが、導入には電子署名のガイドラインの策定も必要となる。

 

image2

 

 

社会実験は、『賃貸』『法人』の取引から最大2年間 

IT化を進める手順は次の通り
(1)はじめは社会実験を行なう
(2)社会実験を行った際、現行の宅建業法違反の基準が適用されるか否か留意が必要
(3)トラブルを最小限にするために「賃貸取引」「法人取引」について行う
(4)社会実験の期間は最大2年
(5)検証項目を明確にする
(6)社会実験手順を明確にする

 

社会実験に参加するには登録事業者になること

 

登録事業者になると社会実験に参加できるようです。登録事業者になるには次の要件を満たす必要があります

 

要件その1【説明前に行うべきこと】~抜粋~
□テレビ電話、テレビ会議などのIT環境が整っているか?

□設置機器等の要件を満たしているか?

□実験の際、録画、録音データを提供する

□事前に重要事項説明書を送付し、インターネットでの説明の同意確認書を返送してもらうこと
□社会実験で有ると伝えること

□説明を受けるものがITか対面か選べること

□録画、録音され、国に提供されると伝えること/事後にアンケートがあること/などを明確にする

 

要件その2【説明中に行うべきこと】~抜粋~
□説明を受けるものが見えやすい、聞き取りやすい環境にあるかを事前に確認すること

□説明を受ける前に取引主任者証を定時し、記載内容を読み上げること

□取引主任者証を確認した旨を口頭で確認すること

□説明を受けるものが契約者になろうとする者本人であることを確認すること

□インターネットを活用した重要事項説明について同意すること等を口頭で確認すること。

□重要事項説明の間、録画・録音を行うこと。

□録画は説明を受ける側が写った画面と説明する側のワイプ画面の両方を録画すること

□途中で説明を受けるものが中止を求めてきたら中止すること。

□説明の継続が困難であると認めるのに相当な理由が発生したとき中止すること

 

要件その3【説明後に行うべきこと】~抜粋~
□契約時と、契約後から半年後の計2回のアンケートを実施し回収すること

□トラブルの有無について、入居後オーナーや管理会社にも確認すること

□説明を行った取引主任者は消費者の発言が聞き取れたか適切に説明できたかなどの報告をすること。

□個人情報の漏えいがないように録画録音データを補完すること

など

 

 

 

以上

これらのことをクリアする必要があります。ハードル高い・・・。

社会実験のレギュレーションそのものが現実的でないという気もしないでもない。

 

事前の審査や社会実験前のインフラの基準策定にも結構な時間がかかりそうですし ^^;

説明を受けるために、出向かなければならない手間は確かに省けるのでしょうけれども、説明そのものの手段が変わっただけで、なんの時間短縮にもなっていないし、逆にお互いが個人情報をさらさなければならないリスクがあります。単純にテレビ会議に載せ替えて済むような話でもないと思うのですがね、これらを乗り越えて社会実験に参加する事業者と消費者がどの程度現れるのでしょうか?

 

 そもそも重要事項説明は宅地建物取引主任者でないとできないものなのでしょうか?

ここの前提がすべての手続きを複雑にしているような気がします。

 

お客様の本人確認時もそうでしょうけれども、女性従業員などでも、自宅の住所の記載された取引主任者証をカメラに向けて提示すること自体に抵抗が出てくると思います。

 

ここは、しばらくのあいだ興味深く見守ることにします。

 

 

 

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