賃貸マンションのグローバル化に意外な盲点 ~外国からの入居者様が困る現実的な問題 | ユニヴログ

賃貸マンションのグローバル化に意外な盲点    ~外国からの入居者様が困る現実的な問題

管理部・テナントリテンションチームです。

我々の業務は賃貸マンションの入退居の品質管理と入居者様の苦情処理や困りごとをすみやかに解決し、長くお住まいいただくことにあります。

 

グローバルな流れに沿って、我が国にも多くの外国からの労働者や留学生の方々が居住しています。もちろんユニヴ・ライフの管理物件にも多数の外国人の入居者様にお住まいいただいています。今回は外国人の入居者様のお困りごと発生から解決に至るまでのエピソードをご紹介しながら、賃貸マンションのグローバル化についてお話ししましょう。

■エアコンが効かないらしい・・・

暖かい陽気の日が続く、とある春先ごろの話です。

『オーストラリア人の入居者様の代理』とおっしゃる方(この方は日本人)から「エアコンが効かないらしいので対応してあげてほしい」とのお電話がありました。

 

通常、我々は入居前に、室内の点検を行い、その際にエアコンの動作確認を必ず行っています。こちらのお部屋は入居されて間もないお部屋でしたので、確認漏れでもないかぎり、エアコン本体やリモコンの不具合の可能性はそう高くはありません。

 

なんらかの不具合が発生しているようですのですが、いかんせん入居者様本人ではなく代理の方からのお電話です。いただいた電話だけでは原因の特定が難しいため、現地訪問のうえ、確認をさせていただくのが定石です。しかし、今回のケース、ご入居者様はオーストラリア人男性。代理人の方に管理会社への電話を依頼されていることからわかるように、入居者様は日本語がまったく話せないのです。そして、私は英語が大の苦手。訪問したとして、果たして、うまくコミュニケーションを取ることができるのでしょうか?私には自信がまったくないのです。

 

 

■頼みの綱・・・

英語が大の苦手の私が・・・

あゝ…想像しただけで脂汗が出そうなこの状況・・・・。

英語がしゃべれない私は、すがる思いで、代理人の方に、現地確認の際の立ち会いをお願いしてみました。

 

「ご訪問させていただいてエアコンの状況を確認したいのですが、代理人様お立合い

  いただけますでしょうか?」

代理人様   「いや・・・それが私、〇〇県にいますので立ち会えないんですよ。」
「あ、え!?・・・そうなんですか・・・・実は私、英語がまったく  ダメなんです。・・・・(ああ困った!)」

 

 

無残にも代理人の方に立ち会いいただくというプランはかなわぬ夢と消えてしまいました。他府県にお住まいのため立会不可という代理人の方。そりゃそうでしょう。立ち会いできないのは仕方のないことです。

 

・入居者様は日本語が話せない。

・私も英語が話せない。

・頼みの綱の代理人様は他府県在住。

 

再び脂汗が出そうになるのを抑えながら最後のお願いをしてみることにしました。

 

 

「もし、可能でしたら、現地で話がうまく伝わらない時に、携帯電話かけさせていただいて、助けていただいてもよろしいですか?

代理人様 「はい、それでしたら大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。・・・・」 ヽ(^。^)ノ ああヨカったぁ!

 

 

この時ほど、携帯電話の発達と普及に感謝したことはありません。なんせ訪問時に言葉が通じなかったときは、代理人の方に携帯電話で通訳してもらえるのですから!。さきほどの緊張から、少し安堵しつつ、早速、準備をして現地訪問に出発しました。

 

 

■オートロックの前に立ちはだかる壁

 

オートロックは、入居者以外の建物内への無用な立ち入りを防止するセキュリティ機能です。訪問者は鍵のかかったマンションの入り口扉で、操作盤から訪問先の号室番号を押し、呼び出しをします。呼び出しを受けた入居者は、室内にある受話装置を通してマンション入り口の訪問者と通話し、訪問者が誰で、どんな用件で訪問してきたかを確認することができます。

問題ない来訪者だと判断したら、受話装置にある解除スイッチを押して遠隔操作でオートロックを解除し、訪問者を建物内へ立ち入りさせることが出来るのです。

 

 

さあ、エアコンの不具合が起きているというマンションに到着しました。

オートロックのあるマンションですので、操作盤からオーストラリア人の入居者様の号室へコンタクトをとることにします。

オートロック

 

「ピンポーン」(オートロック操作盤からお部屋を呼び出す音)
オキャクサマ   「ガチャ。」(お客様が受話器と取る音)

 

 

まったく自信はないのですが、ここはファーストコンタクトですから、英語で名乗ることにします。

 

 

「ハロー。ディスイズ ユニヴライフコーポレーション」
オキャクサマ 「…」

 

おや?・・・

 

 

自動ドアが開く気配がありません。最初のコンタクトで失敗してしまったのでしょうか?

もしかして私の発音が悪かったのでしょうか?

 

ユニヴライフは に濁点ですからユニァースァイオリンと同じようにヴのときに下唇をかむように発音するのでしょうけど、もしかして、その下唇の噛み方が甘くて発音が悪かったからなのでしょうか?

 

「(・・;) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ほんの数秒の事だったのかもしれませんが、このわずかな沈黙の時間に、私の耳の後ろがポカポカとあったかくなりだして、汗腺から粘っこい汗が染みだす準備を始めています。思いもよらぬノーリアクションに焦りはじめています。

 

もう一度トライしてみます

 

 

「ピンポーン」(オートロック操作盤からお部屋を呼び出す音)
オキャクサマ  「ガチャ。」(お客様が受話器と取る音)

 

 

今度は、ゆっくりと・・・、ふたたび英語で、名乗ってみます

 

「ハロー。 ディス イズ ユニ ライフ コーポレーション・・」
オキャクサマ   「〇▲×サデュシdゲd??dfしゅはいう?hづいあ??」

 

 

今度は返答がありました。

ヴの発音に注意を払ったのが功を奏したのでしょうか?

お客様から返答が返ってきたことに、ちょっとびっくりしながらも喜んでいたのですが

 

肝心のお客様が何とをおっしゃっているのかさっぱり判りません。

オートロックの操作盤のスピーカーから、入居者様のお声は聞こえてきますが、聞こえてくる言語の中から自分の知っている単語を聴き出すことができません。 うーん困った。

 

お客様の口調から推察して、決してお怒りの状態ではないということは判りましたので、私は、エアコンの問題を確認しに来たということを、持っている単語を駆使して、お伝えし、扉を開けて欲しいと伝えました。

 

お客様にはおそらく伝わったのだと思います。

ただ、お客様の方でオートロックの扉を遠隔操作で開錠する方法がわからないようで、お客様に扉を開けていただいて、中に入る事が出来ません。

 

「すいませ~ん。開けさしていただきますね」

 

最後は日本語によるエクスキューズに頼らざるを得ません。

なかなか進展がみられないので、管理者使用するオートロックを解除する暗証番号を使って扉を開け、お客様のお部屋に向かうことにしました。

 

まさか言葉の壁がオートロック以上の侵入ブロックにつながるとは・・・

廊下を歩きながら、これから先に起きる出来事を想像すると不安がどんどん大きくなります。

 

「話が通じなかったらどうしよう…」

先ほどのオートロックのコミュニケーションで自分の英語力の無さに愕然としてしまい。この時には、代理人様による電話サポートの切り札があることなどすっかり忘れてしまっていました。

 

エレベーターに乗り込み、上階に行くにつれ、比例して上がっていく心拍数。

エレベーターの扉が開いておりたったその時!

 

廊下に立ち尽くす大きな人影!

嗚呼!摩天楼!

 

なんと驚いたことに、わざわざ玄関の外に出て待ってくださっていました。

私よりもはるかに大きい、入居者様におそるおそるあいさつをしてみます。

 

私    「ハロー」・・・(にこっ)

 

するとにこやかに笑いかけられ

 

 

オキャクサマ 「ドウゾ」・・・(ニッコリ)           

 

 

と部屋の中に招き入れていただきました。

よかった・・・

 

 

■暴走するエアコン?

 

つい数分前のオートロックインターホン越しでの緊張を一気にほぐしてくれるお客様の笑顔。やはり、人はフェイスtoフェイスでコミュニケーションすれば余計な緊張もしなくて何とかやっていけるのかもしれない。

そんなことを考えながら緩んだ笑顔でお客様のお部屋に入らせていただいたその時です。

 

 

 

「うぁっ!寒むっ!」

 

 

 

尋常じゃない寒さです

お客様の笑顔でほぐされた体が一瞬でこわばります

季節は春先なのに室内は真冬に逆戻りです。

 

 

IMG_0841

 

 

 

そしてお部屋のテーブルには飲みかけのウォッカの瓶が・・・

ウォッカ

寒冷地の国で気付け薬として飲用されていたアルコール度数の高いお酒「ウォッカ」。真冬並みの寒さの室内で過ごすには、「ウォッカ」の力が必要だったのでしょう。お部屋はそれくらい寒かったのです。

 

 

ということは、

エアコンの不具合=エアコンの暴走なのでしょうか?

 

「これはえらいことかもしれませんぞ!!」

と心の中で色めき立ちながら、原因究明と問題解決に着手します。

 

 

まずはリモコンを確認します。

手に取ったリモコンの液晶表示から、どのような設定であったのかを確認します。もし、異なる設定をして室内が寒冷地ほど冷やされていたのだとしたらリモコンから発信される信号が間違っているのか、リモコンの信号を受信する本体側の信号解析に問題があるかを疑わねばなりません。

 

もし、リモコンが「冷房」となっていたら・・・それは、まぁ、普通なんですけどね・・・。

 

■エアコン不具合の意外な盲点

 

手元のリモコンには小さな液晶パネルがついており、どのような設定で運転されているのかを液晶パネルから読み取ることができます。現在の設定値を確認することは、問題解決の第1歩です。

 

そして、手に取ったリモコンの液晶表示は・・・・・

 

 

「冷房」です・・・・

 

 

手に取ったリモコンにはしっかりと「冷房」の位置に稼働を表す「◄」記号が表示されており、エアコンは、リモコンから発信された「冷房せよ」という信号通りに稼働していました。

 

リモコンを操作して運転切替を「冷房」→「ドライ」→「暖房」→「自動」→「冷房」に変更してみますと、リモコンの表示もエアコンも操作通りに反応します。

 

いくつかの操作テストを施した結果、エアコンもリモコンもどちらも正常に動作していることが判明しました。

ではなぜ、お客様は真冬のようにキンキンに冷やされた部屋で困っておられたのでしょうか?

 

 

答えはこのリモコンにありました。

 

 

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マンションの設備として設置されているエアコンのリモコンは日本のメーカーの製品ですので、

リモコンの表示は全て漢字もしくは仮名による日本語表示

となっています。そのため、漢字や仮名を読めない方は操作の方法が全く判らないのです。

 

このリモコンでアルファベット表記されているのは「型番」とメーカー名の「TOSHIBA」だけです。

使う人が全員日本語が読めるという前提で製造されているんですよね。

 

 

 

入居者様はリモコンの文字が理解できないまま、冷房運転のエアコンをどうすることもできずに困っておられたのです。

「冷房運転になっていたのが原因ですよ」なーんて英語でいえたらかっこいいのですが、まったくもって私には翻訳能力がありません。

知ってる単語を駆使してメモ用紙に

 

 冷房=cool

 暖房=hot

 運転切替=change

 

と書いてご説明いたしました。

すると、ご入居者様は、ご理解いただけたようで、ニッコリと笑顔で私に微笑みかけてくださいました。

 

 

もしも

運転/停止 ボタンがせめて違う色で表示されいたとしたら・・・・

文字ではなくスイッチオン・オフを表す記号

onoff

で表記されていたとしたら・・・・・・・・

たとえ文字が読めなくても

効き過ぎたエアコンをまよわず停止させることができたでしょう。

 

 

 

_____

 

英語が大の苦手の私にとって、「大事なのは、コミュニケーションを取ろうとする姿勢。言葉が通じなくても何とかなるものだ」と実感したのと同時に、それ以上に私たちが見落としがちな外国人の方が感じるバリアがあるんだと知りました。

 

コミュニケーションの上での「言葉の壁」以外にも

ユニバーサルデザイン化されていない設備機器のインターフェース

「日本語表記の文字」が大きな障壁になっている。

ということ。

 

理想は入居時に立ち会って室内の設備の説明することで、操作方法についてご理解いただくことが良いのでしょうが、なかなかマンパワー的に難しいのが現状です。それでも『ユニバーサルデザインのリモコンに交換』したり、『翻訳した取扱い説明書などの用意』をすることなど、賃貸のグローバル化にとって重要なことなんだ、と強く感じたのでした。

 

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